前衛原稿
「前衛2009年2月号」に論文(・・・というほどのものでもないけど)が掲載されています。
わたしも普段よまない雑誌なので
たいていのひとも読まないとおもうので、以下原稿を掲載します。
前衛では若干短く編集されています。
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どんな家庭に生まれどんな地域で育っても、すべてのこども達には等しく医療を!〰大阪からの発信が厚生労働省・自治体を動かすきっかけに
大阪社保協ホームページhttp://www2.ocn.ne.jp/~syahokyo/
1. 忘れられないC君のこと〜こどもは保険証がないことを学校で訴えている
「6年生のC君は運動会の練習時に突き指をしました。
黄色くなって微妙だったので湿布を貼って、
『おうちに手紙を書くわ。腫れてきたら病院に連れて行ってもらってね。』と言ったら、
『保険証ないねん、先生、湿布くれ』って。
『湿布あげるよ。けどね、腫れてきてらお医者さんで診てもらってほしいんやけど』
『先生、保険証ないねん、お父さん仕事ないねん』というやりとりをしました。
『そしたら湿布もってかえり。おうちの人に貼ってもらいや』と言いました。
けれど、彼は父親を気遣って何もいわないし、
だから自分で湿布を貼って、また月曜日に見せに来ました。
本当にこどもたちはそういう親のしんどさを大変よくわかっていまして、
気遣って、いわない、みせない、自分でする。
次の日保健室に朝一番に見せにくる、言いに来る。
そんなこどもたちが増えています。」
これは2007年10月6日に大阪で開催された「こどもシンポ」で、シンポジストの養護教員(保健室の先生)の発言の一部分です。
国民健康保険は大変深刻な問題を抱えていながら、困っている人々の姿が見えない、悩みを抱えている人が相談してこない、という現実があります。大阪社保協へは、介護保険や後期高齢者医療制度について連日のように相談電話がありますが、国民健康保険についてはほとんどありません。
しかし、こどもシンポで前述の発言を聞いた時、「国保証がないことを、こどもたちは学校で訴えているのだ」と知り、そして、学校現場と、私たち社会保障運動団体が全くつながっていないことに気づき、「こどもたちに申し訳ない、私たち大人がネットワークを作っていないために、こどもたちにこんなにつらい悲しい思いをさせてしまっている!」と強く思いました。
2.大阪社保協としてできることはなにか
学校現場と私たち社会保障運動団体は確かにつながっていない。
でも、いま私たちができることは何だろうか。
大阪社保協はこれまで国保や介護保険などで毎年数回くどいほど大阪府内43市町村調査を行い、独自データを集約・分析・蓄積してきた実績があります。(これらデータはすべて大阪社保協ホームページにアップしています)
そこで今年、毎年4月から実施する市町村国保調査の中に資格証明書発行世帯の乳幼児・小学生・中学生(義務教育世代)の数を訪ねる項目を入れたのです。資格証明書発行世帯台帳と住民基本台帳を突合してこども数を数えてくれと要請したのです。
3.調査でうきぼりになった深刻な事実〜大阪で2000人のこどもが無保険状態にある
6月初めには大阪市・茨木市・守口市・四条畷市・寝屋川市・柏原市・堺市をのぞく36市町村から乳幼児77人・小学生293人、中学生239人、総計609人という回答を得ました。この数字は予想以上に深刻なものでした。
さらに、未回答自治体は資格証明書発行数が多い自治体で、大阪市の資格証明書発行10725件、茨木市2534件、寝屋川市2188件、堺市4503件。大阪全体の資格証明書発行は29433件で、この4市だけで19950件、大阪全体の3分の2を占めています。つまり、単純計算しても、大阪全体で資格証明書発行世帯には1800人、約2000人の無保険のこども達がいるのではないかと推計し、2008年6月10日付「大阪社保協Fax通信775号」ではじめて発信しました。
このFax通信をうけて、6月末に毎日新聞がマスコミしてはじめてこどもの無保険問題を報道し、さらに7月には朝日新聞も「こどもの貧困問題」として報道し、社会問題化につながっていきました。
4.自治体キャラバン行動で1000人以上の大阪のおとなたちが「こどもを守れ」と全市区町村と対話
6月末から10月初までの大阪社保協2008年度自治体キャラバン行動では、すべての市区町村の国保担当者とこの問題について「こどもたちには何の罪があるのか」「児童福祉法にはこどもを健全に育てる義務があると明記されている」「なぜ自治体がこどもを間接的に虐待するのか」とはげしくやり取りをしました。
この問題については、「こどもには絶対発行しない」と断言する自治体と、「こどもを扶養するのは親の義務」「法に基づいて発行しているので仕方ない」などとする自治体にはっきり分かれました。
これは、国民健康保険の保険者は市町村であり、現場に裁量がある制度であるため、その自治体の考え方次第でこどもがいる世帯にまで資格証明書を発行するのかどうかとなるのです。
私たちは、児童福祉法第二条に明記されている「児童育成の責任は親だけにあるのではないこと、自治体にも責任があること」を全市区町村の国保担当者に繰り返し話をしました。
5.マスコミとの共同が社会問題化を作り出した
「無保険のこども」問題を全国的に大きな社会問題としてはじめて報道したのは、毎日新聞大阪本社社会部です。
そして、その後朝日新聞大阪本社が「こどもの貧困」問題として取り上げたのもこの運動の大きな原動力となりました。
担当者はみな若い記者たちですが、「生まれた家、育った地域によって子どもが医療で差別されるのはおかしい」という大阪社保協の当たり前の主張に共感し、マスコミとして独自調査を積極的に行いながら、厚生労働省に対しても全国調査を行うよう要請するなど、私たちの運動と同一歩調をとりながら、発信を現在もつづけています。
・2008年6月 毎日新聞が「無保険:大阪17市町で子ども628人」とはじめて報道
・2008年7月 朝日新聞が「こどもの貧困」として大きく報道
・2008年7月 民主党が厚生労働部門会議で取り上げる
・2008年7月 毎日新聞の協力のもと大阪全体で1782人のこどもが無保険と判明
・2008年8月 毎日新聞が全国大都市調査結果を実施、横浜3692人、千葉838人、大阪748人、和歌山407人、大分379人など20都市で約7300人のこどもが無保険と報道。
・2008年8月 厚労省が資格証明書実態について全国調査の指示を都道府県に発出。
・2008年10月 厚労省が全国3万3千人の15歳以下のこどもが無保険との全国調査結果を発表。同時にこどものいる世帯に対する特別な配慮についての通知発出
6.大阪でも、全国でも、議会で大きく取り上げられた
2008年9月11日、大阪市議会民生保健常任委員会で、この問題が日本共産党北山良三議員によって取り上げられましたが、民生保健局長も国保収納課長も、そして平松市長も「資格証明書発行は特別な事情なく長期に滞納している世帯に国民健康保険法に義務づけられている」「発行は負担の公平と接触の機会のために行う」「発行にいたるまで窓口できめ細かく相談に乗り、充分に事情をお聞きしたうえで」「弁明の機会も設け」「文書の送付、自宅への訪問、電話などあらゆる手を尽くし」繰り返し答弁。
北山議員は最後に「11月の保険証切り替え時までに時間があまりない。児童福祉の観点からこどもには通常保険証発行を市長の判断で行ってほしい」と市長に強く迫りました。市長は「このことが社会的な問題になっているのは認識している。国が実態調査に入っているので国の動向みたい」「厳しい財政状況をかかえているが、もう一度検討したい」と答弁したのです。
私たちはキャラバンの中で、6カ月未満滞納者に対して保険料徴収員が訪問するだけで、区役所職員は全く訪問しないこと。それどころか、納付相談にきた市民に対して財産調査を行い「預貯金これだけあるのに滞納分払わなければ差し押さえをするぞ」と脅しをかける区役所もあること。さらに、区役所から滞納者に送る文書は滞納額を提示した「督促状」だということも掴みました。
9月12日には早速、「平松市長・国保収納課長あての意見書」を提出し、議会答弁と現場の実態とに乖離があることを指摘。
10月6日の大阪社保協と国保収納課との懇談では「こどもへの通常証発行」については確かに「検討中」であり、「最終的には市長が判断」と回答。保険証発行にむけて局は政令市調査や府内自治体調査、全区役所からのヒヤリングも行っていることも明らかにしました。
そして、10月31日、大阪市は遂に15歳までのこどもに対して無条件に3カ月の短期保険証を発行することを決定したのです。
豊中市はいち早く9月市議会で「こどものいる世帯には資格証明書発行はしない」と表明しました。豊中市は2008年10月29日付毎日新聞で「地方自治体にもこどもの健全育成に責任があると定めた児童福祉法の趣旨を尊重した」と説明しています。これはまさしく私たちが自治体キャラバン行動の中で、市町村に何度も強調してきたことでした。
全国の動きについて詳しくは把握していませんが、全国の社保協はじめさまざまな団体が自治体に対して申し入れを行い、そして全国の議会でも共産党議員などにより取り上げられ、こどもには資格証明書を発行しないと表明する状況を作り出しているのだと思います。
6. 「無保険のこども」問題が孕む3つの重大な側面
「無保険のこども」問題には3つの重大な側面があります。
1つめは、国民健康保険そのものの問題です。国民健康保険第一条に「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」と明記されています。
国・厚生労働省・自治体がいうような「相互扶助・共済制度」では全くなく、そして日本の皆保険制度を下支えをする医療のセーフティネットです。
しかし、高すぎる保険料によって排除される人々が現時点で滞納世帯が384万5597世帯、資格証明書交付世帯が33万742世帯もあるという現実は、国民健康保険そのものが社会保障制度たりえていないことを如実に示しています。
2つめは、ワーキングプア問題です。こどものいる世帯は世帯主が20歳台から40歳代の若い世帯で、被用者保険に入れない労働者たちです。平成19年度厚生白書でも国保加入世帯の24%が被用者世帯、つまり働いている世帯となっています。いわゆる日雇い、派遣、登録、パート、アルバイトで生計をたてている世帯が所得に対して高すぎる保険料のために無保険状態に陥っている可能性が大きいのです。厚生労働省は資格証明書発行世帯の所得調査をただちに行い、実態を把握すべきです。
3つめは、児童福祉の問題です。こどもたちが生まれた家、育っている地域によって、医療を等しく受けられない状況を作っている国・地方自治体は児童福祉法を遵守していないのではないかという点です。
児童福祉法にはこう書かれています。
〔児童福祉法〕〜理念、国・地方公共団体の責任
第1条〔児童福祉の理念〕
すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。
2 すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。
第2条〔児童育成の責任〕
国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。
第3条〔児童福祉原理の尊重〕
前二条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されなければならない。
「こどもの無保険」問題は、国・地方自治体が第二条の「児童育成の責任」放棄ではないのか。そして、資格証明書を発行する自治体が理由としてあげる「法(国保法)に基づいて行っている」というのは、第三条違反ではないのかと考えます。
7. 国保は医療のセーフティネット だからこそ命を救うものでなければならない
「こどもの無保険」問題は、大きく動きました。
厚生労働省は全国の実態を把握しながらも、こどもへの資格証明書発行の最終的な判断を自治体に任せました。そのため、多くの自治体は「まず役所に相談に保険証を取りに来い」という態度です。しかし、子どもが病気になったとき、駆け込むのは医療機関であり、役所ではありません。
この点については、新潟県が11月20日に舛添要一厚生労働相に対し子どもを一律に給付停止の除外対象とするための国保法の改正を求める要望書を提出しました。
そして遂に12月19日、15歳までのこどもには無条件に6ヶ月の短期保険証で対応するという改正国保法が成立しました。
しかし、こどもだけに資格証明書発行除外をすれば問題が解決するのかといえばそうではありません。 私たちは、「こどもの無保険」問題がはじめて国民健康保険を大きな社会問題として世に問うたと考えています。
なぜ、国民健康保険が法に謳われた社会保障制度として機能しないのか、なぜこれほどまでに高すぎる保険料が加入者を苦しめるものなのか、なぜ保険料滞納で財産や命まで奪われなければならないのか。
国保を本来の社会保障制度に近づけるための運動が何よりも必要です。
大阪社保協は、国民健康保険の実態や加入者の声を把握し、大阪から全国へと発信しながら、国を厚生労働省を動かす運動の一翼を今後も担う決意です。
すべての人に等しく医療が保障されるまで、私たちの闘いは続きます。
わたしも普段よまない雑誌なので
たいていのひとも読まないとおもうので、以下原稿を掲載します。
前衛では若干短く編集されています。
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どんな家庭に生まれどんな地域で育っても、すべてのこども達には等しく医療を!〰大阪からの発信が厚生労働省・自治体を動かすきっかけに
大阪社保協ホームページhttp://www2.ocn.ne.jp/~syahokyo/
1. 忘れられないC君のこと〜こどもは保険証がないことを学校で訴えている
「6年生のC君は運動会の練習時に突き指をしました。
黄色くなって微妙だったので湿布を貼って、
『おうちに手紙を書くわ。腫れてきたら病院に連れて行ってもらってね。』と言ったら、
『保険証ないねん、先生、湿布くれ』って。
『湿布あげるよ。けどね、腫れてきてらお医者さんで診てもらってほしいんやけど』
『先生、保険証ないねん、お父さん仕事ないねん』というやりとりをしました。
『そしたら湿布もってかえり。おうちの人に貼ってもらいや』と言いました。
けれど、彼は父親を気遣って何もいわないし、
だから自分で湿布を貼って、また月曜日に見せに来ました。
本当にこどもたちはそういう親のしんどさを大変よくわかっていまして、
気遣って、いわない、みせない、自分でする。
次の日保健室に朝一番に見せにくる、言いに来る。
そんなこどもたちが増えています。」
これは2007年10月6日に大阪で開催された「こどもシンポ」で、シンポジストの養護教員(保健室の先生)の発言の一部分です。
国民健康保険は大変深刻な問題を抱えていながら、困っている人々の姿が見えない、悩みを抱えている人が相談してこない、という現実があります。大阪社保協へは、介護保険や後期高齢者医療制度について連日のように相談電話がありますが、国民健康保険についてはほとんどありません。
しかし、こどもシンポで前述の発言を聞いた時、「国保証がないことを、こどもたちは学校で訴えているのだ」と知り、そして、学校現場と、私たち社会保障運動団体が全くつながっていないことに気づき、「こどもたちに申し訳ない、私たち大人がネットワークを作っていないために、こどもたちにこんなにつらい悲しい思いをさせてしまっている!」と強く思いました。
2.大阪社保協としてできることはなにか
学校現場と私たち社会保障運動団体は確かにつながっていない。
でも、いま私たちができることは何だろうか。
大阪社保協はこれまで国保や介護保険などで毎年数回くどいほど大阪府内43市町村調査を行い、独自データを集約・分析・蓄積してきた実績があります。(これらデータはすべて大阪社保協ホームページにアップしています)
そこで今年、毎年4月から実施する市町村国保調査の中に資格証明書発行世帯の乳幼児・小学生・中学生(義務教育世代)の数を訪ねる項目を入れたのです。資格証明書発行世帯台帳と住民基本台帳を突合してこども数を数えてくれと要請したのです。
3.調査でうきぼりになった深刻な事実〜大阪で2000人のこどもが無保険状態にある
6月初めには大阪市・茨木市・守口市・四条畷市・寝屋川市・柏原市・堺市をのぞく36市町村から乳幼児77人・小学生293人、中学生239人、総計609人という回答を得ました。この数字は予想以上に深刻なものでした。
さらに、未回答自治体は資格証明書発行数が多い自治体で、大阪市の資格証明書発行10725件、茨木市2534件、寝屋川市2188件、堺市4503件。大阪全体の資格証明書発行は29433件で、この4市だけで19950件、大阪全体の3分の2を占めています。つまり、単純計算しても、大阪全体で資格証明書発行世帯には1800人、約2000人の無保険のこども達がいるのではないかと推計し、2008年6月10日付「大阪社保協Fax通信775号」ではじめて発信しました。
このFax通信をうけて、6月末に毎日新聞がマスコミしてはじめてこどもの無保険問題を報道し、さらに7月には朝日新聞も「こどもの貧困問題」として報道し、社会問題化につながっていきました。
4.自治体キャラバン行動で1000人以上の大阪のおとなたちが「こどもを守れ」と全市区町村と対話
6月末から10月初までの大阪社保協2008年度自治体キャラバン行動では、すべての市区町村の国保担当者とこの問題について「こどもたちには何の罪があるのか」「児童福祉法にはこどもを健全に育てる義務があると明記されている」「なぜ自治体がこどもを間接的に虐待するのか」とはげしくやり取りをしました。
この問題については、「こどもには絶対発行しない」と断言する自治体と、「こどもを扶養するのは親の義務」「法に基づいて発行しているので仕方ない」などとする自治体にはっきり分かれました。
これは、国民健康保険の保険者は市町村であり、現場に裁量がある制度であるため、その自治体の考え方次第でこどもがいる世帯にまで資格証明書を発行するのかどうかとなるのです。
私たちは、児童福祉法第二条に明記されている「児童育成の責任は親だけにあるのではないこと、自治体にも責任があること」を全市区町村の国保担当者に繰り返し話をしました。
5.マスコミとの共同が社会問題化を作り出した
「無保険のこども」問題を全国的に大きな社会問題としてはじめて報道したのは、毎日新聞大阪本社社会部です。
そして、その後朝日新聞大阪本社が「こどもの貧困」問題として取り上げたのもこの運動の大きな原動力となりました。
担当者はみな若い記者たちですが、「生まれた家、育った地域によって子どもが医療で差別されるのはおかしい」という大阪社保協の当たり前の主張に共感し、マスコミとして独自調査を積極的に行いながら、厚生労働省に対しても全国調査を行うよう要請するなど、私たちの運動と同一歩調をとりながら、発信を現在もつづけています。
・2008年6月 毎日新聞が「無保険:大阪17市町で子ども628人」とはじめて報道
・2008年7月 朝日新聞が「こどもの貧困」として大きく報道
・2008年7月 民主党が厚生労働部門会議で取り上げる
・2008年7月 毎日新聞の協力のもと大阪全体で1782人のこどもが無保険と判明
・2008年8月 毎日新聞が全国大都市調査結果を実施、横浜3692人、千葉838人、大阪748人、和歌山407人、大分379人など20都市で約7300人のこどもが無保険と報道。
・2008年8月 厚労省が資格証明書実態について全国調査の指示を都道府県に発出。
・2008年10月 厚労省が全国3万3千人の15歳以下のこどもが無保険との全国調査結果を発表。同時にこどものいる世帯に対する特別な配慮についての通知発出
6.大阪でも、全国でも、議会で大きく取り上げられた
2008年9月11日、大阪市議会民生保健常任委員会で、この問題が日本共産党北山良三議員によって取り上げられましたが、民生保健局長も国保収納課長も、そして平松市長も「資格証明書発行は特別な事情なく長期に滞納している世帯に国民健康保険法に義務づけられている」「発行は負担の公平と接触の機会のために行う」「発行にいたるまで窓口できめ細かく相談に乗り、充分に事情をお聞きしたうえで」「弁明の機会も設け」「文書の送付、自宅への訪問、電話などあらゆる手を尽くし」繰り返し答弁。
北山議員は最後に「11月の保険証切り替え時までに時間があまりない。児童福祉の観点からこどもには通常保険証発行を市長の判断で行ってほしい」と市長に強く迫りました。市長は「このことが社会的な問題になっているのは認識している。国が実態調査に入っているので国の動向みたい」「厳しい財政状況をかかえているが、もう一度検討したい」と答弁したのです。
私たちはキャラバンの中で、6カ月未満滞納者に対して保険料徴収員が訪問するだけで、区役所職員は全く訪問しないこと。それどころか、納付相談にきた市民に対して財産調査を行い「預貯金これだけあるのに滞納分払わなければ差し押さえをするぞ」と脅しをかける区役所もあること。さらに、区役所から滞納者に送る文書は滞納額を提示した「督促状」だということも掴みました。
9月12日には早速、「平松市長・国保収納課長あての意見書」を提出し、議会答弁と現場の実態とに乖離があることを指摘。
10月6日の大阪社保協と国保収納課との懇談では「こどもへの通常証発行」については確かに「検討中」であり、「最終的には市長が判断」と回答。保険証発行にむけて局は政令市調査や府内自治体調査、全区役所からのヒヤリングも行っていることも明らかにしました。
そして、10月31日、大阪市は遂に15歳までのこどもに対して無条件に3カ月の短期保険証を発行することを決定したのです。
豊中市はいち早く9月市議会で「こどものいる世帯には資格証明書発行はしない」と表明しました。豊中市は2008年10月29日付毎日新聞で「地方自治体にもこどもの健全育成に責任があると定めた児童福祉法の趣旨を尊重した」と説明しています。これはまさしく私たちが自治体キャラバン行動の中で、市町村に何度も強調してきたことでした。
全国の動きについて詳しくは把握していませんが、全国の社保協はじめさまざまな団体が自治体に対して申し入れを行い、そして全国の議会でも共産党議員などにより取り上げられ、こどもには資格証明書を発行しないと表明する状況を作り出しているのだと思います。
6. 「無保険のこども」問題が孕む3つの重大な側面
「無保険のこども」問題には3つの重大な側面があります。
1つめは、国民健康保険そのものの問題です。国民健康保険第一条に「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」と明記されています。
国・厚生労働省・自治体がいうような「相互扶助・共済制度」では全くなく、そして日本の皆保険制度を下支えをする医療のセーフティネットです。
しかし、高すぎる保険料によって排除される人々が現時点で滞納世帯が384万5597世帯、資格証明書交付世帯が33万742世帯もあるという現実は、国民健康保険そのものが社会保障制度たりえていないことを如実に示しています。
2つめは、ワーキングプア問題です。こどものいる世帯は世帯主が20歳台から40歳代の若い世帯で、被用者保険に入れない労働者たちです。平成19年度厚生白書でも国保加入世帯の24%が被用者世帯、つまり働いている世帯となっています。いわゆる日雇い、派遣、登録、パート、アルバイトで生計をたてている世帯が所得に対して高すぎる保険料のために無保険状態に陥っている可能性が大きいのです。厚生労働省は資格証明書発行世帯の所得調査をただちに行い、実態を把握すべきです。
3つめは、児童福祉の問題です。こどもたちが生まれた家、育っている地域によって、医療を等しく受けられない状況を作っている国・地方自治体は児童福祉法を遵守していないのではないかという点です。
児童福祉法にはこう書かれています。
〔児童福祉法〕〜理念、国・地方公共団体の責任
第1条〔児童福祉の理念〕
すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。
2 すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。
第2条〔児童育成の責任〕
国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。
第3条〔児童福祉原理の尊重〕
前二条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されなければならない。
「こどもの無保険」問題は、国・地方自治体が第二条の「児童育成の責任」放棄ではないのか。そして、資格証明書を発行する自治体が理由としてあげる「法(国保法)に基づいて行っている」というのは、第三条違反ではないのかと考えます。
7. 国保は医療のセーフティネット だからこそ命を救うものでなければならない
「こどもの無保険」問題は、大きく動きました。
厚生労働省は全国の実態を把握しながらも、こどもへの資格証明書発行の最終的な判断を自治体に任せました。そのため、多くの自治体は「まず役所に相談に保険証を取りに来い」という態度です。しかし、子どもが病気になったとき、駆け込むのは医療機関であり、役所ではありません。
この点については、新潟県が11月20日に舛添要一厚生労働相に対し子どもを一律に給付停止の除外対象とするための国保法の改正を求める要望書を提出しました。
そして遂に12月19日、15歳までのこどもには無条件に6ヶ月の短期保険証で対応するという改正国保法が成立しました。
しかし、こどもだけに資格証明書発行除外をすれば問題が解決するのかといえばそうではありません。 私たちは、「こどもの無保険」問題がはじめて国民健康保険を大きな社会問題として世に問うたと考えています。
なぜ、国民健康保険が法に謳われた社会保障制度として機能しないのか、なぜこれほどまでに高すぎる保険料が加入者を苦しめるものなのか、なぜ保険料滞納で財産や命まで奪われなければならないのか。
国保を本来の社会保障制度に近づけるための運動が何よりも必要です。
大阪社保協は、国民健康保険の実態や加入者の声を把握し、大阪から全国へと発信しながら、国を厚生労働省を動かす運動の一翼を今後も担う決意です。
すべての人に等しく医療が保障されるまで、私たちの闘いは続きます。


