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貧困と石川啄木

石川啄木の26年間を追い始めています。

学校の教科書でしか知らなかった石川啄木ですが、
この人の人生は26年間しかなくて、
20歳で結婚して26歳で死ぬまで、
ずっと貧困のなかにして、
そして結局、貧困のために早く死んでしまった人なんだということ。
そして貧しくなければ、
もっと長生きして、
どこかで、文壇にも世間にも認められて

「若いときはいろいろ暮らしが大変でしたが、若いときの貧乏は、買ってでもしなさいなんていいますからね・・・」なんて、どこかで書いていたのかもしれないですが、
でも、石川啄木は本当に「貧困」「不遇」「借金」「病気」の6年間を生きてきて、そして逝ってしまった。

北海道新聞のこの連載http://www5.hokkaido-np.co.jp/bunka/takuboku/index.php3は多方面から啄木の人間像全体を探っています。

そんな石川啄木の貧困の中で、ささえてくれた友人2人にささげるという「一握の砂」
(宮崎郁雨とは、絶縁のまま死んでしまうのですが。)
その一部です。



一握の砂  石川啄木

函館なる郁雨宮崎大四郎君
同国の友文学士花明金田一京助君

この集を両君に捧ぐ。予はすでに予のすべてを両君の前に示しつくしたるものの如し。従つて両君はここに歌はれたる歌の一一につきて最も多く知るの人なるを信ずればなり。
また一本をとりて亡児真一に手向く。この集の稿本を書肆の手に渡したるは汝の生れたる朝なりき。この集の稿料は汝の薬餌となりたり。而してこの集の見本刷を予の閲したるは汝の火葬の夜なりき。

著者

明治四十一年夏以後の作一千余首中より五百五十一首を抜きてこの集に収む。集中五章、感興の来由するところ相邇(ちか)きをたづねて仮にわかてるのみ。「秋風のこころよさに」は明治四十一年秋の紀念なり。


我を愛する歌

東海(とうかい)の小島(こじま)の磯(いそ)の白砂(しらすな)に
われ泣(な)きぬれて
蟹(かに)とたはむる

頬(ほ)につたふ
なみだのごはず
一握(いちあく)の砂を示(しめ)しし人を忘れず

大海(だいかい)にむかひて一人(ひとり)
七八日(ななやうか)
泣きなむとすと家を出(い)でにき

いたく錆(さ)びしピストル出(い)でぬ
砂山(すなやま)の
砂を指もて掘(ほ)りてありしに

ひと夜(よ)さに嵐(あらし)来(きた)りて築(きづ)きたる
この砂山は
何(なに)の墓(はか)ぞも

砂山の砂に腹這(はらば)ひ
初恋の
いたみを遠くおもひ出(い)づる日

砂山の裾(すそ)によこたはる流木(りうぼく)に
あたり見まはし
物(もの)言(い)ひてみる

いのちなき砂のかなしさよ
さらさらと
握(にぎ)れば指のあひだより落つ

しっとりと
なみだを吸(す)へる砂の玉
なみだは重きものにしあるかな

大(だい)という字を百あまり
砂に書き
死ぬことをやめて帰り来(きた)れり

目さまして猶(なほ)起(お)き出(い)でぬ児の癖(くせ)は
かなしき癖ぞ
母よ咎(とが)むな

ひと塊(くれ)の土に涎(よだれ)し
泣く母の肖顔(にがほ)つくりぬ
かなしくもあるか

燈影(ほかげ)なき室(しつ)に我あり
父と母
壁のなかより杖(つゑ)つきて出(い)づ

たはむれに母を背負(せお)ひて
そのあまり軽(かろ)きに泣きて
三歩あゆまず

飄然(へうぜん)と家を出(い)でては
飄然と帰りし癖よ
友はわらへど

ふるさとの父の咳(せき)する度(たび)に斯(か)く
咳の出(い)づるや
病(や)めばはかなし

わが泣くを少女等(をとめら)きかば
病犬(やまいぬ)の
月に吠(ほ)ゆるに似たりといふらむ

何処(いづく)やらむかすかに虫のなくごとき
こころ細(ぼそ)さを
今日(けふ)もおぼゆる

いと暗き
穴(あな)に心を吸(す)はれゆくごとく思ひて
つかれて眠る

こころよく
我にはたらく仕事あれ
それを仕遂(しと)げて死なむと思ふ

こみ合(あ)へる電車の隅(すみ)に
ちぢこまる
ゆふべゆふべの我のいとしさ

浅草(あさくさ)の夜(よ)のにぎはひに
まぎれ入(い)り
まぎれ出(い)で来(き)しさびしき心

愛犬(あいけん)の耳斬(き)りてみぬ
あはれこれも
物に倦(う)みたる心にかあらむ

鏡(かがみ)とり
能(あた)ふかぎりのさまざまの顔をしてみぬ
泣き飽(あ)きし時

なみだなみだ
不思議なるかな
それをもて洗(あら)へば心戯(おど)けたくなれり

呆(あき)れたる母の言葉に
気がつけば
茶碗(ちやわん)を箸(はし)もて敲(たた)きてありき

草に臥(ね)て
おもふことなし
わが額(ぬか)に糞(ふん)して鳥は空に遊べり

わが髭(ひげ)の
下向く癖(くせ)がいきどほろし
このごろ憎(にく)き男に似たれば

森の奥より銃声(じうせい)聞ゆ
あはれあはれ
自(みづか)ら死ぬる音のよろしさ

大木(たいぼく)の幹(みき)に耳あて
小半日(こはんにち)
堅(かた)き皮をばむしりてありき

「さばかりの事に死ぬるや」
「さばかりの事に生くるや」
止(よ)せ止せ問答

まれにある
この平(たひら)なる心には
時計の鳴るもおもしろく聴(き)く

ふと深き怖れを覚え
ぢっとして
やがて静かに臍(ほそ)をまさぐる

高山(たかやま)のいただきに登り
なにがなしに帽子(ばうし)をふりて
下(くだ)り来しかな

何処(どこ)やらに沢山(たくさん)の人があらそひて
鬮(くじ)引(ひ)くごとし
われも引きたし

怒(いか)る時
かならずひとつ鉢(はち)を割(わ)り
九百九十九(くひやくくじふく)割りて死なまし

いつも逢(あ)ふ電車の中の小男(こをとこ)の
稜(かど)ある眼(まなこ)
このごろ気になる

鏡屋(かがみや)の前に来て
ふと驚きぬ
見すぼらしげに歩(あゆ)むものかも

何(なに)となく汽車に乗りたく思ひしのみ
汽車を下(お)りしに
ゆくところなし


・・・・・つづく

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Author:crecre
大阪の社会保障のことなら何でもまかせて・・・といえるようになりたいと日々勉強勉強
大好きなものは・・・
着物、旅行、露天風呂、読書、映画、足つぼマッサージ、料理(なんでも作ります。特にパスタははっきりいって、そのへんのイタリアンには負けませんし、時間さえあればピザも生地から、餃子も皮からつくります。煮物も大得意です。最近パンも焼いています)
大好きな人たちとの楽しいおしゃべり+美味しいお料理。
表計算ソフトのエクセル・統計が大好きです。
大切なものは・・・もちろん2人の息子、そして三匹のにゃんず。
性格は・・・非常に前向き、後ろは殆ど振り向きません。

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